第12章 砂の里—四代目風影—
「えっとルウさん、怒鳴ったりしてすみませんでした」
荒ぶる心を落ちつけて、厳しくならないように気をつけながら、ルウさんに頭を下げる。
しかし、彼は膝をついてうつむいたままだ。
「ルウさん。怒ってませんよ。方角教えますから一緒に行きましょう」
優しく優しく、をモットーに声をかけると、やっとルウさんがそろりと顔を上げた。
その青色の目には、雫。
「え。る、ルウさんどうしたんですか!?」
ルウさんが泣いている。
いつも強気なルウさんが泣いているという事実に、慌てふためき、意味もなくわたわたと手を振った。
「嫌われたかと思った」
ルウさんがぽつりとつぶやいた。
その声はいつになく弱々しく、震えていて、なんだか切なくなる。
「ミユキに嫌われたら、俺は生きていけねぇ。比喩じゃなくだ。頼む、嫌わないでくれ。おれは、おれは・・・もう、一人なんだ」
・・・
やばい。
これヤンデレ予備軍の予感じゃないか?
少々、場にそぐわぬ、若干の危機感を抱きつつ、疑問を口に出す。
「一人?」
そう聞いたわたしに、ルウさんは自嘲気味に笑った。
「ああ。俺の家族はもういない。全員・・・・・・死んじまった。俺には友達もいねぇ」
なるほどね。
どういう事情か知らないけど、家族は死に、頼れるのはわたしだけ、と。
ほうほう。
好意の理由もこれかな。
唯一頼れる人であるわたしに、好意を向けるのはおかしいことじゃない。
むしろ、わたしからの好意をもらうには、いい方法だ。
好意は返されるっていうしね。
いやしかしねぇ、頼れる人がわたしだけって・・・うーん。
なんかすっきりしないんだよね。
ルウさんの気持ちを否定するわけじゃないけど、ルウさん明らかに子供じゃないし、一人で生きていけないなんてことはないと思う。
フガクさんたちと話すルウさんを見てると、友達がいないなんて不思議だし。
わたし以外に頼れる人、できるとおもうんだけどな。