第12章 砂の里—四代目風影—
だってこの能力は、悪用されるとものすごくやっかいだ。
例えば。
ここに人が100人くらいいたとしよう。
そこに、悪巧みをするルウさんがいて、においを放ったとする。
さらに、風が吹く、あるいは人工的に風が起こせれば、100人は全員ルウさんの匂いにやられることだろう。
ましてそれが、ひと100人ではなく、里全体だったら。
被害は計り知れない。
きっとフガクさんはそれをは分かっていたのだ。
だから、なるべく願いは叶えるようにしていた。
いやでも。
においなんだから、鼻をふさいでしまえば効果は・・・ない?
「匂いで脳を刺激するってことは、鼻をふさがれたら効かないんですか?」
「いや。においっつっても、人間が感じるにおいで脳を刺激してるわけじゃなく、どっちかっつーと、空気が入り込んで———の方が正しい。だから耳とか口から入るんでも効く。効果は鼻の方が高いけどな」
詳しいことはよく分からん、と威張ったようにルウさんが言うが、威張ることじゃない。
むしろなんで学ばなかったと問いただしたい。
「そんなことより早く行こーぜ。すぐに風影のいるところに向かえっていったのミユキだろ」
「あ」
「あ、じゃねぇ。ほら行くぞ」
ルウさんにせかされることに若干の不満を覚えながら、わたしは風影のいる邸へ向かった。