第12章 砂の里—四代目風影—
さてと。
いきますか。
気合いを入れて、わたしが目で合図を出すと、ルウさんはさっと駆けていく。
わたしも離れてそれを追う。
ルウさんが見張りの視界に入った。
見張りは武器を構え、何かを叫ぶ。
しかし、ルウさんは気にせず走り続けている。
見張りの攻撃もことごとく躱し、彼らまであと10メートルほどか、といったところで。
見張りが突然倒れた。
ルウさんは彼らに近づきその身を蹴飛ばすと、わたしに手招きをした。
「ルウさん!見張りはどうして倒れたんですか!」
「ん?俺がやったんだけど?」
なんでもないことのようにあっさりと言ってのける彼に、少々めまいがした。
ふらっと揺れるわたしを見て、ルウさんはにやにやと笑っている。
「どうだ?俺のこと見直したか?」
・・・正直に言って、見直した。
しかしそれを素直にいうことには、抵抗がある。
だからあえて、その質問には答えず、
「どういう術なんですか?」と、質問で返した。
ルウさんは少し不満そうな顔をしながらも、わたしの質問に答えてくれた。
「うーん、正式な名前はしらねぇんだけど、一族ん中で、ノウ術、って呼ばれてたな」
「ノウ術?」
「ああ」
ノウ術・・・脳術か?それとも濃術とか?
「この術は、においによって脳を刺激し、眠らせたり、記憶を消したり、五感をの機能を停止させたり・・・とまあ、そんなことができる」
ええええ。なにそれ超羨ましい。
わたしも出来るようになりたい。
「わたしにも出来ますか?」
「いや、無理だろうな」
何故に!?
「この術には、俺の一族にしか受け継がれない、ある特殊な器官が必要なんだ。そいつは鍛えることで、発する匂いを自由自在に変えることが出来るようになる。そのにおいで、脳を刺激するんだ」
先天性の能力か。
一族ってことは、ルウさんのお父さんも使えた可能性が高い。
フガクさんはそれを知っていて一目置いていた?
もしくは危惧していた?