第8章 閑話
ふっと息を吐いて、吸って、またふっと吐いて。
落ち着いたところで、わたしはイタチ兄さんを抱きしめ返した。
だって、せっかくこんな“おいしい”状況になってるんだから、利用しなきゃ損でしょうよ。
その心意気の元、行動を開始する。
イタチ兄さんの胸に、額をすりすりこすりつけて、甘えてみる。
耳をぴとっとくっつければ聞こえてくるのはイタチ兄さんの心音。
どっどっ、と少し早めの心地よい音。
いつまでも聞いていたくなる落ち着く音。
「ミユキ?」
胸に耳をつけているせいか、直接声が響いてなんだか面白い。
さらにぎゅうっと腕に力を込めると、イタチ兄さんもぎゅうっと抱きしめ返してくれた。
ふぁー、幸せー。
イタチ兄さん大好きー。うふふ。
「俺も好きだよ」
うわー、わたしの頭がおかしい!幻聴が聞こえる!
イタチ兄さんが「好きだよ」だって。
きゃー、幸せすぎて倒れそう!
「それは困るな」
あれ?
さっきからおかしいな。
「何が?」
イタチ兄さんと会話が成立しているような?
「うーん、なんとなくミユキの気持ちが流れてきてる気がしてね、それに答えてるんだけど。会話が成立してるなら、やっぱり気持ちが流れてきてるのかな」
・・・え、何それ。
うちは一族にそんな能力あるの?
「聞いたことはないな」
いやしかし、とイタチ兄さんは考えモードに入ってしまった。
仕方がないので、しばらくイタチ兄さんを堪能しつつ待つことにした。