第5章 忍者になりたい
「イタチは森で、的相手に練習をしていろ」
「はい父さん」
「緋月は、俺についてこい」
「はい」
初修行の日。
イタチと指定された場所に来たはいいのもの、さっそく別行動らしい。
わたしは来た道を戻っていった。
ついた先は、家。
こんなすぐに戻ってくるとは思ってなかった。
それなら最初から家でやれば良いのに。
面倒な。
「ここだ」
示された場所には、壁一面の本。
「ここには、忍術に関する本が陳列されている。ミコトから、お前は文字が読めると聞いた」
ここの文字は日本語。
読めて当たり前だ。
この世界では習っていないので読めることを知られるのは、本意ではなく、自分からはいうまい、と思っていた。
が。
ちょっと修行のことで浮かれすぎていた。
昨日、わたしはそのことをミコトさんに知られてしまったのだ。
眠れなかった昨日の夜。
浮かれていたわたしは、何故か居間の机に置いてあった、忍術に関する本を見つけ、こみ上げる衝動を抑えきれず、それを手に取った。
そして、思わず呼んでいるうちに熱が入り、「チャクラはこういうのか」とか「この術ってこんな印だっけ?」とか、内容を口に出してしまっていたのである。
それをミコトさんに見られた。
なんとも間抜けだ。