第19章 原作開始
「ミユキ先生?」
決意を新たにしたところで、下の方から聞き慣れた声で名前を呼ばれた気がした。
ふいっと下を見ると。
「そんなところで何してるんだってばよ」
ナルトがいた。
体のどこを探しても、木の葉の額当ては見当たらない。
彼は原作通り卒業試験に落ちてしまったらしい。
ということは原作通り事件が起きるのか。
頑張れ、ナルト。
わたしはよっ、とかけ声に合わせて木を降りた。
降りたって立ち上がると、丁度同じくらいの高さにナルトの目。
その瞳をを見つめていると、彼の気持ちが流れてくるような気がした。
「サスケ、待ってるんだよね」
「・・・そっか」
・・・
めっさ落ち込んどる。
調子狂うなぁ。
いつもなら“サスケ”って名前を出したところでちょーいやな顔するのに。
気まずい空気が流れ、わたしは人差し指で頬をかいた。
それを打開しようとわたしは口を開く。
「あー、ナルトはどうしてここに?」
「俺は……単なる暇つぶしだってばよ」
「ふーん」
ナルトは、気づいているのかな?
自分が……“痛々しい笑顔”を浮かべていること。
そんな笑顔を浮かべてると……わたしの餌食になっちゃうよ?
「ナルト、卒業試験落ちたんだってね」
「!?」
わたしはわざとそういった。
ナルトの息をのむ音が聞こえる。
それもしだいにとけていき、また痛々しい笑顔に戻った。
「俺ってば、分身の術は苦手なんだってばよ」
ナルトはそういい、頭の裏で手を組んだ。
・・・つまんないの。
泣けばいいのに。
・・・・っと、やばい。
思考が危ない方に行くところだった。
ふぅ、落ち着けわたし。
すーはー。すーはー。
よし、OK。
「うん、そっか。また次頑張ってね」
どうせ次はないんだろうけど。
今日合格するから。
「ああ!頑張るってばよ!」
そう笑ったナルトの顔は先ほどより晴れやかで。
そのことにわたしは先ほどとは真逆のようにも思える安堵の感情を抱き、なんだか自分の気持ちが分からなくて、気持ち悪くなった。