第16章 うちは一族虐殺事件
突然「そういえば」とルウさんが口を開いた。
「別に9年後じゃなくても呼んでくれりゃあいつでも飛んでいくからな」
what?
わたし耳おかしいのかな?
「旅が始まった時みたいに“ルウさん”ってよんでくれりゃー、どこでもいつでも駆けつけてやる」
聞き間違いじゃなかった!
駆けつける、というルウさんはわたしに晴れやかな笑顔を向けていて、到底嘘をついているようには思えない。
というより暗くて「いい感じに笑ってるな」くらいしかわからない。
え、ちょ、え?
いやうん、まあ。
呼べば来てくれるんだよね?
じゃあ
「何にも用事ないときとかでも呼んでいいの?」
「いいぞ」
「いいんかーい」
即答かいな。修行するんじゃなかったの?
「一瞬で移動できるから、苦じゃないからな」
鼻高々、自信満々に言い放つルウさん。
その傍ら、わたしは旅の前、ルウさんを呼んだときのことを思い出していた。
・・・確かに、ルウさんって呼んだらすぐきてたよな。
あれってどうしてなんだろ。
「一瞬?でどうやって移動するの?」
「あー…俺の能力、特殊な器官からにおいを発するって言っただろ?」
「うん」
「においには種類があって、そのうちの一つに、マーキングするためのにおいがあんだよ」
マーキング?
それって赤丸の・・・あれ、みたいなのかな?
「マーキングって?」
「マーキングってーのは、対象物に、特殊な器官から出た匂いをつけておくこ
と。で、そのにおいをつけとくと、対象物の位置が分かって、一瞬で飛んでける、つーわけ」
それってつまり
飛雷神の術、みたいな感じ・・・・なのか?
マークした位置に一瞬で移動できる
その点で飛雷神の術と、ルウさんの術には共通点がある。
なら、距離や持続時間はどうなのだろう。
飛雷神は媒介が必要だったし、それを自分で置きに行かなきゃいけない。なかなか使い方の難しい術だったようにおもう。