第16章 うちは一族虐殺事件
「そう言えばルウさん」
話しかければ、わたしの頭を撫でる手を止めることなく「ん?」と反応を示す。
さすがに頭を撫でられながら話すのはいやなので、無理矢理ルウさんの手を頭からどかした。
「旅のことなんだけど」
「ミユキもか。俺もそのことで話あんだよ」
はぁ。そうですか。
じゃあルウさんから先に聞こうかな。
なんとなく自分の話の腰を折られたようになったが、よくあることなので、気にせずルウさんの話を聞くことにする。
「ルウさんの話って何?」
「俺、旅やめて修行することにした」
・・・
・・・
「…は?」
「旅やめて修行する」
「いや二回言わなくてもいいから」
え?旅、やめて、修行?
えっと、うーんと。
・・・いいよ?
いいけどさ。
わたしも旅やめようって言おうと思ってたから願ったり叶ったりなんだけど。
・・・あっさりしすぎじゃない?
なんか少し、こう、ね?釈然としないというか・・・。
ま、いいや。
その提案にはもちろん乗りますよ。
「うん。実はわたしも、もう旅やめようって言おうと思ってたんだよね」
「まじ?」
「まじです」
目を見開いて驚いているルウさんにこくっと頷いて肯定。
さらに言葉を続けた。
「わたしはアカデミーに入ろうと思ってるんだ」
「アカデミー?卒業したんじゃなかったのか?」
「うーん、卒業はしたけど、もう一回、みたいな?その辺は要相談かな」
そうだ。アカデミーに戻るとは言っているが、戻れる保証はどこにもない。
むしろ戻れる確率は低いと言っていい。
なんたって一度卒業しているのだ。
生徒になるにはちょっと実力がありすぎる。
それに……わたしは一族を殺した。
そんな人間をアカデミーという次代の忍者を育成する機関に入れられるわけがない。
・・・まぁ、バレないことを祈ろう。