第16章 うちは一族虐殺事件
わたしとイタチ兄さんは、自らの手で朱く染めた、がらんどうな街を静かに歩いた。
「ねぇ」
わたしが零すと、その音はいっそ不気味なほど赤い街に響く。
「イタチ兄さんはこれからどうするの?」
「俺は…暁に入る」
「暁ってあの?」
「……あのが分からないが、暁だ」
まあそうだと思っていた。
原作の流れ通りだ。
「・・・ミユキはどうするんだ?」
「わたし?わたしは……アカデミーに戻るよ」
当たり前のように言うと、かすかに驚いた気配が隣から伝わってきた。
「アカデミー?卒業したんじゃなかったのか?」
「卒業したよ。けど、サスケを守るにはやっぱり近くに居るのが一番かなって」
わたしは悪戯っぽく笑ってイタチ兄さんを見上げた。
見上げた先のイタチ兄さんは、無表情で。
忍で
暗部で
これから暁に入る人間なんだと
少し寂しくなった。
「そうだな。・・・サスケのこと、頼んだぞ」
「うん分かってる。
でも、イタチ兄さんもたまに様子、見に来てね」
「ああ」
こんな会話でも、どこか冷たい空気を発するイタチ兄さんは、やっぱり遠い人で。
前も遠かったけど、今の方がもっと遠くて。
イタチ兄さんがこうなってしまうのを止められないわたしがにくくて情けなくて。
もうなんだか気持ちがごちゃごちゃして分からない。
それでも
イタチ兄さんがどうなろうと、わたしは
「イタチ兄さん大好き」
「!?」
わたしの言葉なんかに空気が揺らぐイタチ兄さんを
愛しくおもう
この気持ちだけは変わらないのだ。