第16章 うちは一族虐殺事件
フガクさんとミコトさん。
二人分の命を背負う重み。
肩にさらなる重みが加わったような感覚が、自分の心を冷やす。
と
正面の襖がゆっくりと横に動き、人影が現れた。
サスケだった。
サスケはふらふらとおぼつかない足取りで、室内に入り、呆然と亡き両親の体を見つめた。
「兄さん!父さんと母さんが…なんでどうしてっいったいだれがこんなことを…っ!」
サスケが声を震わせ絶叫する。
刹那。
サスケの頬をクナイがかすり、扉に突き刺さった。
それを投げたのはイタチ兄さん。
イタチ兄さんは先ほどまで震えていたことなど嘘のようにサスケを無表情で見返した。
「愚かなる弟よ……万華鏡写輪眼」
万華鏡写輪眼
イタチはサスケにその術をかけた。
こんなたいそうな術を大事な弟にかける、それだけイタチが本気だということだろう。
今、サスケは見せられている。
イタチがやったこと。
ここにたどり着くまでに見たであろう死の痕跡、その真実を。
ああひどい。
イタチ兄さんはひどいな。
まだ幼いサスケにあんな無残なものを見せるなんて。
ほんと…苦しい。
黙ってみているしか出来ない自分はいやで、情けなくて、苦しい。
きっとわたしはサスケに気配すら悟られていないはずだ。
わたしの気配の消し方は、うまい。
だから、今は。
黙って見ていろ、自分。
これが、わたしの選択。
「ああああ!やめて兄さん、そんなのみせないで!」
その言葉とともに、サスケは崩れるように倒れこんだ。
「どうして…どうして、兄さんが」
倒れたままのサスケが途切れ途切れに言葉を発する。
どうして。
それはきっと、何故イタチ兄さんは里のみんなを殺したのかと、そう問いたいのだろう。
「己の器をはかるためだ」
「器を…はかる…それだけ…それだけのためにみんなを殺したっていうの…」
「それが重要なのだ」
もう話は終わりだというようにイタチ兄さんはわたしに目配せをしてきた。
わたしはそれに首肯し、イタチ兄さんとともに、幼少期を過ごした家を出た。