第16章 うちは一族虐殺事件
寝室に入ると、フガクさんとミコトさんが座っていた。
何を話すでも、するでもなく、ただじっと。
その背後に、イタチ兄さんと気づかれないように回り込んだ。
はずだった。
「イタチ——と、ミユキか」
掛けられた声は、間違いなくわたしたちの正体を示していて。
ふたりそろって、無言で驚いた。
「ミユキは久しぶりね。約2年ぶりかしら」
ミコトさんにもそう言われ、二重に驚く。
わたしは自分の気配を消すことに、結構な自信をもっていたから、こんなときなのに少しへこむ。
と同時に、さすがの二人だ、と感心もする。
「そうか、お前はむこうについたか、イタチ。・・・・ミユキまでいるとは思っていなかったが」
久々の再会が、こんな形になるなんてわたしも思っていなかった。
育ててもらった恩を仇で返すような形になって、申し訳なく思う。
「父さん、母さん……俺は…」
「分かってるわ、イタチ」
「イタチ、ミユキ、最後に約束しろ」
唐突なフガクさんの言葉にわたしたちはふっと顔を上げた。
「——サスケのことは頼んだぞ」
その言葉に、イタチ兄さんの瞳から涙がこぼれた。
覚悟を決めたはずのイタチ兄さん。
それが今揺らいでいる。
カタカタと、イタチ兄さんのもつ刀が震えていた。
わたしは。
イタチ兄さんと反対に——…笑っていた。
可笑しくて笑っているわけじゃない。
ただ、
笑っていないと、泣いて、決意が鈍りそうだから。
イタチ兄さんの重荷を一緒に背負ってあげることが出来なくなりそうだから。
「恐れるな。それがお前らの決めた道だろう。お前らに比べれば、我らの痛みは一瞬で終わる。考え方は違ってもお前らを誇りに思う」
フガクさん、ミコトさん。
ごめんなさい。ほんとに、ごめんなさい。
サスケは、守りますから——。
「お前は本当に優しい子だ」
わたしの手は横に引かれ
鮮血が
あたりに飛び散った。
*