第3章 あやしい人
そんな思いっきり警戒したわたしに、目の前のやつは何を思ったのか、ゆっくりと近づいてきた。
「質問、答えてくんないの?」
久々の危険に、だんだん気分が上がってきた。
にやりと笑って問えば、そいつは足を止めた。
そして、降参、とでもいうように、両手を挙げた。
「何のつもり?」
ぎゅ、と眉をひそめれば、そいつはやっと口を開いた。
「わしは、アド、と申す」
低くしゃがれた声。
いっちゃあ悪いかもしれないが、口調が少し古くさい。
「お主は、ミユキ、であってるかの?」
その口からわたしの名前がつぶやかれた瞬間、わたしは一気に警戒心を強めた。
何故知っているのか、と。
わたしはなにもいわなかったが、態度でわかってしまったらしい。
「そうか」と一言つぶやいて、目の前のやつは、気を緩めてしまった。
これは気にくわない。
わたしなら、気を抜いても平気だと?
確かに今のわたしは弱い。何も、訓練していないからな。
だが、甘く見られのは気にくわない。
・・・
ま、いくら気にくわないからって、突っ込んでいくほど無謀でもないけど。
だって今突っ込んでいったら確実に負けるし。
最悪死んじゃうし。
そう考えて、目の前のやつに習い、わたしも少し警戒を解いてみせた。
すると、そいつはほっとしたように息を吐き、無遠慮にも、さっきまでわたしが座っていた縁側に腰をおろした。
その行動に唖然とする。
だって、さっきまで警戒してたのに、座るなんて。
ありえない。わたしだったら、そんなのしないしできない。
それなのに、「なぜ君は驚いているんだ?」とでも言いたげにこっちも見てくるもんだから、なんだかおかしくなって、思わず笑ってしまった。