第14章 愛
「お邪魔しまーす」
ルウさんの華麗なツッコミをまるっと無視して、螺旋丸で開けたドアから、我愛羅の部屋に入る。
しっかり挨拶も忘れない。
「ちょ、まてミユキ!これさすがにだめだろ!」
ルウさんがわたしの肩をつかみながら引き留めるので、前に進めない。
うざったいのではずしてほしい。
「離してよ、先進めない」
「いやいやだから、こんな勝手に入ったらだめだろ!ドア壊すのもだめだろ!」
「もう入っちゃったし、壊しちゃったし」
「せめて出ようぜ!我愛羅と夜叉丸さんに怒られっから!」
ものすごい焦った声と顔。
なんかすごく珍しいものをみた気分だ。
というかなんでルウさんはこんなに怒られることを気にしてるんだろう。
別に夜叉丸さんも我愛羅も怖くないのに。
怒られたら怒られたで、反省すればいいだけの話・・・じゃない?
ルウさんは心配しすぎなんだよ。
それに。
もしわたしの悪い予感が当たってたら、夜叉丸さんはもういないし。
だからさ。
「事実を確認するためにも、さっさと先に進まなくちゃいけないんだよ、ルウさん」
「怒られる事実をか!?」
「・・・・」
なんだこの人。
意味分からん。
ルウさんがよく分からなくなってきたので、わたしは強引にルウさんの手を振り払って、部屋の奥へと進んでいった。
ルウさんは、いまだ入ることを躊躇しているのか追ってはこなかった。
「我愛羅ー?」
名前を呼ぶが、返事はない。
とくに気にすることもなく、そろそろと静かに奥へ奥へと進んでいくと、・・・いた。
部屋の隅。
くらい部屋の隅で、我愛羅は丸くなって座っていた。
なんだか様子がおかしい。
そう思いながら、ゆっくりゆっくり近づいていくと、昨日までとの違いに気づく。
小さな変化。しかしそれは大きな意味を持つ。
額に、“愛”。
我愛羅の額に、愛の文字が刻まれていた。
それはつまり——我愛羅が夜叉丸さんに裏切られたということ——……。