第14章 愛
その日も、いつも通り、我愛羅邸を訪れた。
ドアをノックする。
いつもならすぐに駆けるような足音が聞こえ、「ミユキっ!」と、癒やされる笑顔が飛んでくるはずなのだが・・・今日はいっこうにその気配がない。
首を傾げながらもう一度、戸をたたくも結果は同じ。
「留守か?」
「うーん、夜叉丸さんはともかく我愛羅が留守って考えられないけどなぁ。この時間はわたしたちが来るって分かってるはずだし」
わたしたちが来るだろうと分かっていて留守にするなんてあり得ない、そう思えるほどには、我愛羅と親しくなっていた。
「自信満々だな」
「だって事実だもん」
ふんっ、と鼻を鳴らして言い切るわたしに、ルウさんは呆れたらしく、ため息をはき出した。
「で?どうすんだ?入れねーだろ」
「ん?強行突破」
「強行突破?」
「そうそう。まあみててよ」
そういってわたしはドアの前からルウさんを離れさせ、自身も少し後ろへ下がった。
足を軽く開いて、片手に意識を集中させはじめる。
片手中央を中心として、チャクラを渦巻くように集めていく。
形は球。
大きさは掌ほど。
昔から知っていて、最近出来るようになった、これ。
すんなりと出来たことに喜びながら、わたしはそれをドアめがけて勢いよく突き出した。
「螺旋丸っ!」
声と同時に地鳴りのような轟音が、静かな街に響き渡る。
立ちこめる砂埃。
ぱらぱらとなにかが崩れ落ちゆく音。
砂が晴れると。
見えたのは、わたしにとって見慣れた空間。
すなわち、我愛羅の家の玄関口。
「よしっ、成功!」
「いや成功じゃねぇだろ!」