第13章 砂の里—我愛羅—
さて、強引に部屋に押し入った、わたしとルウさん。
わたしは我愛羅の部屋を訪れている、という興奮から、あたりをきょろきょろと見回した。
ベットが一つ、テーブル一つ、椅子二つ。
わたしたちが上がった部屋にはそれしかなかった。
奥にキッチンらしきところがあったので、食品類はそこらへんにあるのだろう。
しかしひっかかる。
夜叉丸さんがいないのだ。
お母さんには先立たれ、風影であるお父さんには見放され、唯一この頃の彼が心を許していた、夜叉丸さん。
我愛羅は今・・・5歳くらいかな。
それなのに・・・いない?
「お前って、親いねぇの?」
まってルウさん!
直球過ぎる!
もっとこう、オブラートに包まなきゃ!
相手はまだ子供なんだからさぁ!
「ルウさん。デリカシーがないですよ」
わたしの非難めいた視線にも、ルウさんは首をかしげるばかりだ。
この人、どうしたものかな。
「ねぇ我愛羅」
「なに?」
こてんと首を傾げる我愛羅が可愛すぎるのだが、ひとまず置いておく。
「夜叉丸さんいないの?」
我愛羅は目を見開いた。
「夜叉丸のこと知ってるの?」
あ、よかった、夜叉丸さんいるんだ。
「うん。わたしが一方的に知ってるだけだけどね」
「そっか。夜叉丸は今いないよ。買い物に行くって言ってたよ」
はー、今いないのか−。
じゃあとりあえず我愛羅に自己紹介でもしとこうかな。
そもそも名乗っただけだしね。
これからそばにいるんだから少しくらい正体を話さないと、フェアじゃないよね、うん。
今更だけど、我愛羅さんわたしたちのことよく部屋にいれたよね。
いや強引に入ったんだけど。
・・・心配だなぁ。