第13章 砂の里—我愛羅—
そんなわけで我愛羅の砂の攻撃は防がれたわけだが、我愛羅にはそう見えなかったらしい。
自分の砂がわたしの手を握りつぶしてしまったと思ったのだろう。
罵倒の言葉を想像してか、はたまた悲鳴を想像してか、恐怖に顔を歪め、ぎゅっと目を閉じ、うつむいた。
まあしかし。
わたしが悲鳴を上げるわけも、罵倒の言葉を吐くわけもなく。
だって攻撃当たってないし、そもそもあの砂の攻撃くらい避けられるし。
見くびらないで、って感じだよね。
「我愛羅」
わたしの無機質とも聞こえる声に、我愛羅がびくっと身をすくませる。
別に怖がらなくてもいいのになぁ。
「大丈夫だよ。わたしは傷ついてない」
笑顔で言うと、そろりと上がる、我愛羅の頭。
その瞳が、砂を、わたしの手をとらえた瞬間大きく見開かれる。
「どうして」とつぶやかれたかすれ声に、悪戯が成功したような、そんな気がして、少々愉快。
こう思うときは、自分、Sっ気あるな、とか思う。
「うーん。わたし強いからさ、我愛羅の攻撃くらいかわせるんだよ」
ふふん、多分だけどね!
「そうだ、こいつは強いぞ。ついでに俺もな」
・・・・ルウさんそんな風に思ってたんだ。
そして自画自賛。やかましいわ。
「ルウさん・・・」
「なんだよ。変な目で見んなって」
「いや、だって・・・ねぇ」
「なにが、ねぇ、だよ」
「いーえ、べっつにぃ」
「あーもうはっきりしねぇな!」
意味のない会話をして、ルウさんがわたしにいらついた様子を見せたところで、「ふふ」と笑うような声が聞こえた。
声の主は、言わずもがな、我愛羅。
というか今
「我愛羅、笑った?」
わたしが呆然とつぶやくと
「え、あ、・・・ごめんなさい」
小さな声で、謝罪が返ってきた。
「え?謝んなくていいよ。むしろもっと笑って!」
うんうん。
笑ったくらいで怒らないし。
笑ってくれたほうが嬉しいしね。
そう思って、にこにこ笑っていたら、我愛羅は肩を揺らして笑い始めた。
ふふ、という忍び笑いのようなものだったけれど、知らない人であるわたしに対して笑顔を見せてくれたことは、今日の収穫として十分なものだろう。
これからどんどん打ち解けていけるといいんだけど。
・・・ルウさんが一人、不思議そうな顔をしていたのは、見なかったことにしよう。
うんそれがいい。