第10章 黒子のバスケ/黄瀬 涼太
「えっと…不束者ですが…よろしくお願いします」
「!!こちらこそ!よろしくッス!」
ニコッとまた1段と綺麗な笑みを浮かべたリョータは私のことをギュッと抱き締めて、ありがとう。と耳元で囁いた。
抱き締められたのと囁かれたことのWパンチによってかなり軋んだ心臓と共に、私の顔はまた熱を帯始めていた。
「あ…ごめん、ちょっと待って」
そこでまるでタイミングを見計らったかのようにカーディガンに入れていた携帯がバイブレーションによって震動していた。
電話がかかってきたことが理由のようで、心臓などを落ち着かせるためにリョータから離れて1度だけ深呼吸をしてから電話に出た。
「もし…もし?」
『苗字名前さんの携帯でよろしいでしょうか?』
「は、はい!」
その後、内容を聞いた私はボロボロとまた1週間ぶりに涙を流した。泣いている私を見たリョータは焦りながらもハンカチを取り出して私の涙をずっと拭ってくれていた。
そしてしばらく内容聞いてから通話終了をタップした。それを確認したリョータはどんな内容だったんスか?と聞いてきた。
「両親が見つかった。って」
「ほ、本当ッスか!?」
「何かパスポート盗まれたらしくて…3ヶ月さ迷ってたみたい…もう心配して、損した」
「本当…良かったッスね、名前っち」
「うん」
リョータの前ではどうしても涙を流してしまうらしい私は、彼の胸にしがみついて、周りに見られないようにと安堵の涙を流した。
その間彼は頭をポンポンと一定のリズムで子供をあやすように優しく叩いてくれた。
「…ごめん、えっと、帰ろうか」
「名前っちの家、お邪魔してもいいッスか?」
「いいけど、市役所行かないと。戸籍謄本もらわないと行けないんだって」
「着いてくッス!」
「じゃあお散歩も、兼ねよっか」
私の言った事がよっぽど嬉しかったのか、彼は笑顔で喜んで!と言ってくれた。
雨の日に出会い、そこからはずっと雨だった。そして雨の日に別れて、雨の日に再開し、雨の日に付き合った。
どうやら私達は雨の日が縁らしいため、これからもその日を大切にしていこうと思う。隣にいる彼と、共に