第5章 黒子のバスケ/黒子テツヤ
「…苗字さん?」
今の黒子が話し掛けてくれたおかげで帝光の幻覚のようなものは止まった。それにともない頭と心の痛みも
…そうだ1人だから何もできなかったんだ…1人だから
「この間青峰くんに負けて…火神くんに決別のようなことを言われたことも…辛かったです」
「うん」
「でも火神くんは僕を信じてくれた…だから、僕も火神くんを信じて戦います」
「…」
「次のWCで勝ちます。だから見ていてくださいね」
彼の言葉に私の中で反論はなかった。青峰がまた昔のようにバスケを楽しんでくれることを願っていることは私も同じだ
だけれども、私は黙ってみていることなんて…きっとできない
「私も参加していい?」
「…!もちろんです!」
「わん!」
足下で2号がまるで賛成するかのように吠えたことが嬉しくて、ふわりと彼の頭を撫でた
「火神くんと黒子じゃなくて、誠凛一丸で、勝とうね」
「…はい!」
「わん!」
あの日、帝光バスケ部が壊れてしまった日の事件の場所で、2人と1匹小さな約束ができた
そして既に濡れている彼に傘を差し出して、私と黒子との間に2号を入れて、誠凛に戻るため歩き始めた
近い未来で2人が笑ってくれていることを信じて、私は支えようと決した雨の日だった