第64章 魔性の女
4月。
今日から高校2年生になりました。
去年1年は、本当に色々なことがあった。
涼太との出会い。
バスケ部に入部。
様々な出会い。
過去との戦い…。
未来への課題。
今年は、もっともっと強くなりたい。
もっと強く……!
「はい神崎さん、169㎝」
「……え?」
今日は新年度の身体検査。
私の身長を測定した先生から驚きの数字が告げられる。
「ま、待って下さい、間違えてませんか!?」
失礼を承知で確認してしまう。
だって、去年は164㎝だったはず。
1年で5㎝も伸びるなんて、そんな事……!
「はい、169ね」
何度測っても同じ結果に、ガックリと肩を落として保健室を出た。
「お、みわ。元気ないじゃん」
あきとは奇跡的に同じクラスになれた。
残念ながら、涼太は隣のクラス……。
「あき……!
背がまた伸びちゃった……!!」
「あーうん、なんか最近目線高いもんね」
サラッと言われて、さらにショック。
思えば、涼太にも背が伸びたとか年始に電話ボックスの中で言われた……!!
「いいじゃん、足が伸びたみたいだし。
フツーのあたしからしてみたら、羨ましいわ」
「普通が一番なんだよう……!!」
ああ、どんどん可愛げが無くなっていく。
小柄で、思わず守ってあげたくなっちゃうようなそんな女の子になりたい。
「いいんじゃないの、あんたのオトコ、デカいんだから」
うう、それだけが唯一の救い……。
「お、みわ、身体検査終わったんスか?」
ジャージ姿の涼太が、階段を降りて来るのが見えた。
「出たな黄瀬涼太」
「あきサンもっスか」
涼太とあきのやりとりも相変わらず。
「みわがまた背が伸びたって嘆いてるからさあ」
「ちょ、ちょっとあき、言わないでッ!」
「お、やっぱそうなんスか? やったね。
キスしやすくなるっスね」
「……!」
涼太はニコニコして去って行った。
「だってさ。良かったじゃん」
「う、うるさいっ、あき……」
つい、にやけてしまった。