第61章 恋人達は愛に誓いを
「……ね、今日は離れたくないんスけど」
近い、近い。
彼の睫毛が私の目の中まで届きそうだ。
「えっ、今日は私……おばあちゃんの家に」
「バレンタインなんだから、お願い聞いてよ……」
まさかのお願い。
「バレンタインは、昨日終わったよね……っ!?」
「んー……オレ的にはまだ終わってねぇんスわ」
女の私もウッと怯むような美しい上目遣いで、気付いたら抵抗する意欲ごと骨抜きにされている。
その目には欲情の火が灯っているのがハッキリと分かった。
ズルい。
前々から、ずっと思ってるけど…
涼太は……ほんっとーに、ズルい!!
結局、私も折れてしまうのが悪いのか……。
お願いお願いのワンコモードと、私を抱く時の激しく甘い狼モードの切り替えスイッチは一体どこにあるんだろう。
マンションのエレベーターで再びふたりは燃え上がり、もう少しも待てないと言うかのように口付けを交わしながらもつれ合うようにして部屋へ戻った。
この夜も、玄関、リビング、浴室、寝室……と、涼太の精が尽きるまで交わり続けた。
「オレ……バレンタインって凄く好きな日になったっスわ……」
生チョコをぱくりと口に含み、人差し指と親指を舐めながら嬉しそうに涼太が漏らした声が、隣でぐったりしている私の耳に届くことは無かった。