第61章 恋人達は愛に誓いを
今日はバレンタインデーの買い出し。
バレンタインデーまであと2日だ。
部活が終わってからだから、そんなに時間に余裕はない。
事前に決めておいたものを決めた個数買いに行くだけ、って感じだけど…。
あきのおかげで、安くて美味しいチョコも沢山買えたし、大満足。
気持ちだよね、こういうのは。
部員数は多いけれど、マネージャーだってひとりではないんだから、皆でお金を出し合えば、物凄い出費というわけではないし。
既にエコバッグはずっしり重くなっている。
「……常にエコバッグ常備なのがあんたらしいわ」
「ん? だめ?」
「いや、エコでいいんじゃないの」
「あーでも買えて良かった! 安心した、ありがとう!」
「黄瀬のはどうすんの?」
「あ、別に手作りで作るよ。材料は買ってあるから、今日おばあちゃんちで試作するんだ」
涼太には手作りするから、お菓子の材料とは別にラッピング用品も既に買ってある。
後はメッセージカードを添えて……。
チョコレートケーキって、ありきたりかなあ。
でも、人生初なんだ。
"恋人"にチョコを贈るの。
どうしたらいいかって正直よく分かってないけど、なんだかドキドキしてる。
"恋人"って、とっても特別な響き。
「同じ家じゃバレバレだもんね」
「あはは、ホントだね」
おばあちゃん、留守中にキッチン使いまくりでゴメンなさい。
「あきのお買い物はもう終わり?」
「うん、あたしは父さんと彼のだけでいいから」
あきは有名ブランドのチョコを買った。
流石、社会人の彼って感じ。
……お父さん……
私も、一緒に暮らしてたら作ってあげたりしたのかな、チョコ。
……最近、お父さんの事ばかり考えてしまっている。
いけないいけない、ないものねだりだ。
「じゃああき、帰ろっか!」
しかし、振り向いた彼女は、悪〜い笑みを浮かべてこう言った。
「何言ってんのみわ。これからが本番でしょ。ほら、行くよ」
「…………え?」
本番?
なんだか嫌な予感しかしないというか……。