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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第59章 すれ違い


カタカタと、手が震えている。

あんなに怒った涼太は、初めてだ。

私が怒らせた。

黙っていたから。

嘘をついたから。

涼太のためみたいなことを言って、結局私はいつも自分のことばかりだ。


「カップ……片付けなきゃ」

ふたり分のカップを手に取っても、手が震えてカチャカチャとぶつかってしまう。

なんとかシンクまで持って行ったのに、手が滑ってコップはシンク内に落下した。



ガチャンと激しい音を立てて、カップはふたつとも割れてしまった。

「あ……」




もう、おしまい。




そう言われた気がした。

「いけない……われちゃった……」

新聞紙に包んで、捨てなきゃ。

新聞紙、どこだっけ。

しんぶんし。ああ、ここだ。

真っ白な頭で新聞紙を広げて、破片をひとつずつ拾い上げた。

かしゃん、かしゃん。

割れた破片が重なり合う音が、涼太との関係が終わった事を告げているようだった。

ガラスの破片が真っ赤に染まっている。
どこか切ったのかもしれない。


いい、そんなの。

どうでも、いい。


ポケットの中から振動を感じる。

『もしもし? みわ?』

「……あき……」

『さっき黄瀬から電話あってさ。ごめんね、あたし咄嗟に話、合わせる事が出来なくて。
あたしと出掛けてる事にしてたんだよね? なんかワケありだったのかなごめん、大丈夫だった?』

「…………あきっ…………」

『……みわ? ねえ、大丈夫?』


嫌わないで。

嫌わないで。

何を間違えた?

どうしていつも、私は間違えてしまうの?

大事なものを、なくしてしまうの?



涙が止まらない。

全部、自分のせいだ。

大事にしてくれている涼太の気持ちを考えられなくて、怒らせて。

もう、こんなの、涼太と一緒にいない方がいいんだ。

その方が涼太だって、


……わたしなんか、いないほうが。





足が向くまま、ふらりと外へ出た。


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