第58章 すべて受け止めて
「りょう……た……」
「……みわ」
逞しい身体に強く抱きしめられ、深く低く、とても切ない声で何度も名前を呼ばれると、脳みそが働かなくなるくらい感じる。
自分の名前が、大好きになる瞬間。
控え室での行為の時は、結局名前を呼んでくれなかった。
それが凄く……悲しかった。
今は、本当に大切なものを慈しむようにひとつひとつの音を柔らかく、囁いてくれる。
頭も身体も熱くてどうにかなりそう。
強い抱擁が解かれて、残念な気持ちと共にこの先に対する期待が膨らんだ。
柔らかい唇が、肩口から指先に向けて滑ると、触れた部分からじりじりと熱が広がっていく。
「……みわ、肩……まだ痛い?」
さっき、襲われた時に逃げられぬよう腕を捻りあげられ、外れそうになった肩は動かしているうちに随分良くなった。
「ううん、大丈夫……心配かけてごめんなさい」
「でもここ、アザになってる……オレの控え室でテーブルから転がり落ちた時?」
確かに、あの時はあちこちをしこたま打った。
「そうかな……でも痛くないから……あっ」
ペロリ、ペロリとアザを舐める舌が艶めかしく動くのを見て、恥ずかしくて逃げ出したくなる。
「んッ……んん」
ああ、身体が……疼く。
ゆっくり……ゆっくりと欲望を刺激されていくのが耐えられない……。
涼太の手がショーツにかかった時、うっかり忘れていた事を思い出した。
「涼太……まって! まだ、生理……終わりかけ、だから……」
もう殆ど出血はしていないけれど、それでもやっぱりニオイなどは気になる。
「……だから?」
そう言っているのにも関わらず、涼太はショーツを下ろしてしまう。
「……殆ど何もついてないっスよ? ……濡れてはいるみたいだけど……」
……え。
涼太が私のショーツを覗き込んでいる。
念の為つけておいたおりもの専用シートには、透明な粘液がべったりついていた。
……じゃなくて
「いやああーー! ばか! 見ないで!! えっち!! 変態!!」
見られた。見られた。見られた。
足首まで下ろされたショーツをおもむろに脱ぎ、もう見られまいと手の中に隠した。
「みわ……大胆っスね」
意地悪く微笑んだ涼太が、秘部に手を伸ばした。