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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第57章 透明な君


「じゃあ黄瀬君、適当に動いてね」

モデルを始めたばかりの頃は事細かにポーズ指定などがある仕事が
多かったけど、最近になって自由にポージングする仕事が増えた。

自分の頭の中でシチュエーションやイメージを構想して、その世界に入る。

役者のようなものか。
……笠松センパイに役者はムリって言われたっスけど……。

キングサイズのベッドの上での撮影。
いつものサイズに少し落ち着く。
隣にみわがいないのが不満だ。

恋する香水。

匂いというのは、感情や記憶を呼び起こさせるものだと聞く。
プルースト効果、だったっけ。

みわの匂いの香水があればいいのに。
なんて事考えたり。

こうしてオレは、四六時中彼女の事を考えてしまう。

熱いライトに焚かれるフラッシュ。
オレは、目の前にいないみわを誘惑するようにポーズを取る。



オレの匂いが気になるように。


オレの体温を感じたくなるように。


オレに触れたくなるように。


オレに触れられたくなるように。


オレにキスしたくなるように。


オレに抱かれたくなるように。




目の前のカメラをみわに見立てて、誘惑した。

オレにはみわしか見えておらず、これ以上にないくらい集中していた。

「……こりゃ驚きだ。黄瀬君、いいね」

「モデルメインでやって欲しいくらいだ」

そんな会話がされていたと知るのは、まだ先の話である。

ちらりと腹部を見ると、みわがつけた跡が目に入る。
みわと一緒に撮られているようで堪らない。

心臓に付けられた印。
みわにオレの心を全て捧げる。

「はい! 最高! オッケー!!」

一発OKだった。


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