第57章 透明な君
「みわちゃあ〜〜〜〜ん!」
黄瀬家の玄関に入るなり、新年のご挨拶を交わすこともなくお姉さんに抱きつかれた。
ああ良かった、ほっぺたガンガン冷やしたから、もう分からないくらいになってるかも。
「あっ、お、お姉さん……明けましておめでとうございます」
下のお姉さんはふわふわロングヘアで可愛らしい印象。
前に車で送って貰った時よりも髪が伸びてる。
「うんうん、今年もよろしくね〜! 寒かったでしょ〜、入って入って!」
「もー姉ちゃん、強引すぎっス……」
洋風な造りの黄瀬家。
手を引かれてリビングに連れて行かれると、そこはまるでフリーマーケット会場のようになっていた。
「いらっしゃい! みわちゃん、久しぶり。今年も涼太をよろしくね」
涼太のお母さん。
キレイで、優しい。
というか黄瀬家は全員、びっくりするくらいの美人揃いなんだってば……。
「こっ、こちらこそよろしくお願いします!」
「あ、初めまして。長女です。涼太の初めての彼女のみわさんだよね」
上のお姉さんは無造作ヘアでカッコいい。デキる女って感じ。
看護師さんだって言ってた。
みわさんって、なんだか恥ずかしい。
「は、初めてではないと思うんですけど……今、お付き合いをさせて頂いております。神崎みわです」
「そうなの?」
「え〜だって涼太が彼女連れてくんのなんて初めてだも〜ん。だからあたし達にとってはみわちゃんが初めての彼女なの!」
お母さん&お姉さんズの勢いにタジタジ。
「みわちゃんが来てくれたなら、とっておきの紅茶出そうかしら」
「あ、あたしみわちゃんにフランスでお菓子買ってきたよ〜」
「私、ベルギーでチョコを買ったわ」
「姉ちゃん達、みわが困ってるから!」
「みわちゃん、今夜ここに泊まって行くんでしょ〜?」
「えっ、えっ」
「いやいや聞いてねぇし! オレ明日青山で撮影だし!」
「アンタはいいわよ。朝こっから行けばいいじゃない。あたしはみわちゃんとお喋りしたいんだも〜ん」
「ごめんね。私は今日夜勤なの」
「えっ、えっ、えっ」
ど、どうしたらいいのー!