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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第56章 信頼のかたち


……なんだ……?
身体が熱い。

異変に気付いたのは、コーヒーももうすぐ飲み終わるという頃。

下腹部のあたりがじりじりと疼く。

この感覚は……そう、
みわに欲情している時のソレだ。

腹でも壊したかと腹をさすると、驚くことに勃起していた。

……どういう……ことだ……?!

自分の身体なのに、全く興奮していない状態でこんな反応をしているのが不可解で、気味が悪い。

……無意識にみわの事を考えたか……?

ふと目の前の女性を見て気がついた。
Sari。まさか……

「……コーヒー、なんか混ぜたんスか」

彼女は微笑みながら、言葉を返さない。

「Sariサン」

いつの間に。
店員がコーヒーを置いた時だって、特に不自然な動きはなかった。

「ふふッ、若いと効きがいいって本当だった」

こうしている間にも、身体の熱はどんどん上がってくるようだ。

「……帰る」

ガタンという音が響き渡る。

勢い任せに立ち上がったので、椅子を引いた音かと思えば……立ち上がったオレがすぐに尻餅をつき、椅子が倒れた音だった。

立てない。

なんだ、これ。

「リョウタ、大丈夫? マスター!」

マスターと呼ばれた大柄の男性がこちらに歩み寄り、肩を貸してくれる。

「……お店ではお静かにお願いしますよ」

「す、スイマセン……」

椅子に座らせて貰ったが、腰がガクガクと震えて止まらない。

「お客さん、お水持ってきましょうか?」

「あ、お願いします……」

まさか、まさか薬を入れられるなんて。
水を飲んで中和させないと。

そう思ったのに、水を飲んでも改善は見られない。

「リョウタ、行こうか」

整った顔でそう微笑まれるのがなんとも不気味で、ゾッとする。

更に足まで震え、歩くどころか立ち上がることさえできない。
申し訳ないことに、再び大柄のマスターに手伝って貰い、店を出た。

「Sariちゃん、彼こんなんじゃ帰れないでしよ」

「……ぁ、……う」

「ふふ、じゃあマスター、ホテルまで手伝って? 休んでから帰るわ」

「仕方ねぇなァ…」

気付かなかった。隣がホテルだったことに。
Sariが触っていないのに薬を盛られたことに。
マスターがSariの名を自然に呼んだことに。
水を飲んでから症状が更に悪くなったことに。



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