第9章 衝撃
……最近、自己嫌悪ばっかりだよ。
帰り道、黄瀬くんはまた私を家まで送ってくれると言ってきかなくて。
これだって、彼の負担になってしまっているだろうし……。
歩くペースも、いつもよりゆっくりだ。
彼の長い足では、きっともどかしいだろうに。
「黄瀬くん、本当にありがとう。
私、自己管理がなってなかった……以後、気をつけます」
「みわっちは、頑張りすぎだからさ、ちょっと頑張らなくてもいいっスよ」
なんて優しいんだろう。
笠松先輩もそうだ。
ふたりとも、私を責めるような事は一切言わなかった。
私の自己管理がなっていないだけなのに。
情けない……皆に気を遣わせて。
慰めてもらうなんて。
そうこうしているうちに、私のアパートに着いた。
今日はヤツはいない。
心の中でホッと一息つくと、繋いでいる黄瀬くんの手に少し力が入った。
「今日、ウチ泊まりに来ないっスか?」
「そ、そういうわけにはいかないよ……」
突然の提案に慄く。
泊まりって、ご実家なのにそんな迷惑……。
「今日の偵察の結果、聞きたかったんスけど。あとは明日の小テスト対策もお願いしたいし。……やっぱり、だめっスか?」
困った表情の黄瀬くん。
そっか、テスト対策……黄瀬くんは勉強、苦手みたいだし……。
散々迷惑掛けて、困っている彼を無視するような事は、したくない。
協力出来ることなら、なんでもお手伝いしたい。
「え……うーん…じゃあ、少しの間だけ、お邪魔しようかな。テストの勉強、手伝わせてもらうね。でもおうち、大丈夫なの? 突然行ってしまって」
「メールしておくっス!」
パッと笑顔が戻った。
彼の明るさに、救われる。
真っ黒な気持ちに、光が射すようで。
「じゃあ、着替え持ってくるからちょっと待っててね」
一応着替えは持っていって……多分ご迷惑になるだろうから、帰ってくればいいだけの話だし。
どうせまたひとりで寝れないなら、その時間を黄瀬くんに使った方が有意義だ。
力になりたい。なんでもいい、少しでもいいから。