第50章 ウィンターカップ、その後
黄瀬くんの手が、指が、唇が、舌が全身を走って、容易に理性を飛ばしていく。
こんな触れ合い、知らない。
「ん、ん……あ!」
ふと気付けば、自分だけが脱がされている。
もうショーツ1枚という格好だ。
「や、私ひとりで裸なの、やだ……!」
それを聞いた黄瀬くんは妖艶な微笑みを浮かべ、着ているスウェットの上を脱いだ。
発達した筋肉に思わず目を奪われる。
スポーツ選手として鍛えているその肉体は輝くほど美しい。
でも、同じ身長の選手と比べると、彼はやや細身かもしれない。
最近は栄養学も学び始め、スポーツ選手にとってどういった栄養が必要になるのかを日々勉強している。
やっぱりもう少しウエイトを……
「みわ」
名前を呼ばれて頬を突かれると、ようやく意識がこちらに戻ってきた。
「今、違うこと考えてたでしょ」
「あっ、ごめんなさっ……」
散々全身を愛撫された後だからか、頭がぽーっとして、何をしているのか、何をすればいいのかが分からなくなっている。
「……みわ」
身体が重なる。温かくて、安心する重み。
肌から伝わる熱が心地良い。
私の知らない、感覚。
ゲラゲラと下品に笑いながら私を犯し続けたあいつ。
私の人生を無理矢理捻じ曲げたあいつ。
尻の穴の方が締まって感じるからと、膣は使われた事がなかったのが不幸中の幸い、だったんだろうか。
なんとも惨めな話だけれど。
でも、黄瀬くんは私の初めてのひとだと、そう言っていた。
私の知っている「男」は、目の前の彼だけでいい。
私がひとに言ってはいけないと思っていた言葉。
……好き、黄瀬くん……
忘れさせて……。
溢れ出すほどの気持ちなのに実際に言葉に出せないのは、臆病になってしまっているから、だろうか。
「下、触ってもいい?」
黄瀬くんの手が、下腹部からショーツにかかる。
びくりと身体が反応するのが分かる。
以前、突然触られた時には驚くような快感が走った。
不安になりながらも、小さく頷くと彼はキスをしながら、少しだけショーツをずり下げた。
大丈夫。
黄瀬くんが酷いことをする訳がない。
そんな事分かっているけど、嫌な妄想が頭をもたげる。
彼の手が陰毛に触れ、外性器の周りを触り始めると、身体が勝手に震え始めた。