第44章 急転
校門が見えてきて、涼太たちの背中が見えた。
気持ちがホッとして、自然と頬が緩む。
そこから少し離れたところに、人影が。
ふらふらと歩いているシルエット。
格好からして……女性だろうか。
なんだろう。酔っ払い?
なんだか、嫌な感じだ。
その手の中にある光る物に気付いて、思わず息を呑んだ。
あれは、もしかして……更に嫌な予感がして、足を早める。
まだ、声が届く位置ではない。
急いで。急がなきゃ。
女は走っているわけではないから、まだ距離がある。
もうすぐ、もうすぐ声が届く。
早く、
早く。
その時、走り出す女の姿が視界の端に映った。
このままじゃ、間に合わない。
「涼太!!」
自分でも驚くほど大きな声が出た。
涼太がこちらを振り返る。
女には気付いていない。向けられたのは、いつもの笑顔だ。
危ない。
涼太、危ない!
「涼太! 逃げ……!!」
瞬間。
狂気を孕んだ女の叫び声、
ナイフが人の肉に食い込む鈍い音、
人間が倒れ、
アスファルトに打ち付けられる音が響いた。