第32章 映像
「ううん、こっちこそ……強い言い方してごめん。オレ、ちゃんとみわっちの事、大事に抱きたいんス」
長い間苦しめられてきたみわっちを、大事に、大事に抱いてあげたい。
感情に任せての行為には及びたくなかった。
でも、みわっちは頭を縦に振らない。
「ありがとう。すごく、嬉しいんだけど……疲れていたら、癒してあげたい。私がそう思うのはダメなこと……?」
「……どういうことスか……?」
「大事にしてもらうのだけが女じゃないよ。
私だって、好きな人を大事にしたいよ。
黄瀬くんのこと、大事に抱きたいよ。
……あ、私が抱くっておかしいかもだけど……」
恥ずかしそうにそう言うみわっち。
なんだよそれ、聞いたことねーよ……。
どんだけ、惚れさせるつもりなんスか。
「黄瀬くん……」
みわっちの唇が、オレの唇に重なる。
少し震えている。
手が、オレの股間に触れた。
偉そうな事を言っているくせに、下はキチンと反応してしまっている。
「……っ……」
みわっちの唇が、首筋を伝って下りていく。
たどたどしくも、懸命に舌を這わせているのが分かって、全身がゾクゾクした。
「ちょ、みわっち……」
舌が腹筋を沿って下腹部に向かっている。
そんなの、されたら……
みわっちの手がズボンにかかった時、ようやくオレは彼女を抑えた。
「みわっち……そんな挑発してどうなっても知らねっスよ?」
「……あっ」
みわっちを押し倒して、唇を奪う。
これ以上するつもりはなかったのに、彼女は、オレの部屋着のボタンに手をかけ始めた。
「ちょっと、みわっち。今日はどうしたんスか……」
明らかにヘンだ。
何かあった?
「だって黄瀬くん、昨日から変だったから……。何か悩んでるの? 私には言えないこと?」
「……言えないとかじゃなくて……ホラ、仕事の事っスから、イライラする事も多くて、さ」
無理のある言い訳。
「そっか、ごめんね、しつこかったね。寝た方がいいよね……」
「みわっちがしたいっていうなら、するっスか?」
健気なみわっちに、胸が痛む。
わざと悪戯っぽく、彼女の下着に手を入れた。
この状況で、濡れてるわけないけど。