第80章 進展
「はー……笑った」
「も、もうっ」
諸々を使い果たした私達は、大きなベッドに並んで横たわった。
涼太のおかげで、なんだかもうふたりの空気はいつも通りだ。
自分の失態に、落ち込む気持ちはまだあるけれど……今はその気持ちはしまっておこう。
折角涼太が整えてくれた雰囲気を、また逆戻りさせたくないもの。
涼太、きっと私に気を遣わせないようにしてくれたんだよね。
ありがとう。
「オレ……運命とかそういうのキライだから、今まで信じてなかったんスけど」
「運命?」
「いや、運命なんて今でもそんな信じてないっスけど」
確かに、涼太はリアリストだから、運命論を語るのがあんまり想像出来ない。
冗談で言ったりする事はよくあるけれど。
「……なんかさ、みわとは……みわとの出会いは運命だなって思うコトばっかりなんスよね」
「……私、との?」
「オレはオンナなんかいくらでも他人にくれてやると思ってたし、手に入れたいなんて思ったコトもなかった」
一見、物凄く過激な意見のように思えるんだけれど……涼太の表情は、高慢とはかけ離れたもの。
「みわは、オンナだけど……なんか、違うんスよね。オンナである前に、みわなんスよ」
「む、難しいね」
女である前に、私……。
ひとりの人間として、見てくれてる……って事、なのかな。
「みわ、何度でも言いたいんスけど、オレはみわとなら、どんなコトだって乗り切れると思うんスよ。これからどんな大変なコトが待ってるか……オレには分かんないっスけど、それがたとえどんなに辛くても、ふたりなら」
ね? と再び覗き込まれた瞳は、真っ直ぐで。
大好きなひとにそう言って貰える幸せを噛み締めながら、柔らかい唇をそっと受け入れた。