第80章 進展
日に日に室内の湿度が上がっていき、否が応でも夏の訪れを感じる。
今年は梅雨の割に雨が少なくて、お野菜に影響が出ないかな……なんて心配したりして。
涼太のお誕生日から数日後、もうすぐ6月も終わろうという時期。
スマートフォンのスピーカーの向こうからは、以前よりも幾分明るくなった声が聞こえて来た。
『良かったじゃん。誕生日、ちゃんとお祝いしてきたんでしょ』
「う、うん……おかげ様で……ありがとう、あき」
『ありがとうはこっちのセリフ。みわのお祖母さんに良くして貰ってるよ。ありがとね』
あきとは面識もあったし、事情を聞いたおばあちゃんは二つ返事で受け入れてくれた。
私にも、もっと頻繁に帰って来ていいんだよって……。
私、お返ししなきゃいけないひとばかりだ。
もっともっと頑張らないと。
「あの……彼は、どう? 連絡とか、来てる?」
『あー、昨日、着信と留守電入ってた。元気してるかってそれだけだったけど』
「そこに居るのはまだ気付かれてないかな」
『まだ大丈夫っぽい。学校から帰る時も尾行されてないかとか気を付けてるし。別れ話、しなきゃとは思ってるんだけどね……』
長年付き合ったふたり。
きっと、別れるのは簡単じゃない。
それだけ、時間って色々なものを築いていくから。
『みわんトコにも来てないよね?』
「うん、こっちには来てないみたい。もし来ても、大丈夫! あきの居場所は分からないようにするから!」
『……なんか、ごめん』
「え?」
『あたしたちの問題なのにさ、巻き込んでホントごめん……1日も早く解決するように頑張るから。ごめん』
思い詰めたような、悔しそうな、苦しそうな声。
あき……悩んでるんだ。
「大丈夫、本当に大丈夫だよ。巻き込まれたなんて思ってないよ。私に出来ること、あんまりないかもしれないけど頼ってくれたら嬉しい」
『うん、ごめん……ありがと』
早く……解決すればいいのにな。
あきを楽にしてあげたい。