第78章 交錯
「おはようございます。今日はよろしくお願いします!」
翌週土曜日、始発で最寄駅を出発して、東京駅へ。
そこから新幹線で約2時間半……そう、今日は大阪へ初めて向かう日だ。
1泊分の荷物を入れた小さめのボストンバッグ(慌てて買いに行った)を持って、マクセさんと合流したところ。
「久しぶり。なんだか大人っぽくなったね」
「……そうですか?」
「だいぶね」
毎日鏡を見ているけれど、自分自身の変化には全くといっていいほど気付かない。
いつまでも子どもっぽくて、嫌になるんだけど……。
「そろそろ行こう」
「はい」
流石大都会、東京。
いや、私も神奈川育ちではあるんだけれど……東京駅の混雑はTHE・都会という感じでついキョロキョロしてしまう。
「朝食を買っておくといい」
「あ、はい」
切符を受け取って改札を抜け、いつもの何倍もある電光掲示板の下を通って、大きな売店へ。
おにぎりを2つと、お茶を買った。
土曜日の早朝、ホームには人が溢れている。
大きなボストンバッグを持ったひと、キャリーケースを引くひと、恐らくお仕事のひと……それぞれの行先があるんだろう。
アナウンスに続いて新幹線がホームに入ってくると、なんだかとても胸躍った。
昔、こうして新幹線を見て騒いだような記憶がある。
記憶がある……といっても、そんな事があったような気がする、という曖昧なものだけれど。
誰と乗ったのかな。
多分……お父さんとお母さんと、だよね。
座席は7列目。
なんだか縁起がいい。
「神崎、これに目を通しておいて」
「はい」
このお話を頂いてから、マクセさんが私を呼ぶ時の呼び方が『神崎』になった。
手渡されたのは、各選手のデータ。
写真付き、身長から体重からプレー傾向まで網羅された書類だ。
成長するための第一歩。
大きく息を吸って、ゆっくりとめくり始めた。