第77章 共栄
「……マジで、さ……んな可愛い事……なんで言うんスか……」
頬がほんのり赤くなって、息が少し乱れて。
汗で前髪が濡れて……この時の涼太は、誰にも見せたくないくらい、色っぽい。
誰にも……見せたくない。
「ンあ……ッ!」
埋め込まれていた指がずるりと抜けると、ナカがひくひくと蠢いて、彼を待っているのが分かる。
「ホントに……挿れるっス、よ」
「うん……」
はしたない……のは分かっているけれど、火が付いた身体を止める事は、もう出来なくて。
でも涼太が手際良く避妊具を装着するのを見ていると、ふと背景が目に入って、ようやく今ここがどこかというのを思い出した。
部屋だ。
私の。
ひとり暮らしじゃない。
もし、あきに聞こえたら。
「……あ、でもやっぱり、あの、あきがいるから」
そうだよ、うっかりこんな事しちゃったけれど……でも何を今更、なタイミング。
分かってるんだけど、分かってるんだけど、でもでもどうしよう。
「あきサンの部屋まではリビング挟んでるから、大丈夫っスよ」
そっか、そうだよね、うん……
……で、でも!
「リ、リビングに居たら聞こえちゃう……!」
「んなヤボな事するヒトじゃないって」
「涼太、あの」
「ごめん、もーここまで来て止めんのは、無理っスわ……」
起き上がろうとした私の肩を押さえつける腕は力強く、でも優しくて。
ゆっくりと、確かな存在感を持った彼が、入ってくる。
「あ……ぁ……っ!」
引き攣れるような微かな痛みが走る。
でもそれもすぐに快感に変換されて……。
「……キツ……痛くない?」
「ん……へい、きっ……」
少しだけ、痛かった。
いつもよりも強い圧迫感。
いつも涼太が、こうならないようにちゃんと前戯をしてくれていたんだと分かって、涙が出て来そうになる。
どうしてこんなに、好きなんだろう。