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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第72章 悋気


「んで黄瀬、オマエどーすんの? オレは行くけど、オマエ行くわけ?」

「行くっスよ! モチロンっしょ!
2月になったら学校も自由登校になるし」

「あーそうか、ウチも卒業式までは自由登校だわ」

2人の会話を聞いて、ようやく気付く。
そうか、自由登校。

今まで通りに学校生活を送れると思っていたけど、もう卒業……。

特別な3年間だったな。
友達も、……好きなひとも出来て。

毎日が、楽しくて。



「ねえねえ、来月卒業旅行代わりに、皆で温泉でも行かない?」

さつきちゃんが右手を高々と上げてそう言った。

……卒業旅行?

「さつきちゃん、卒業旅行って、大学生とかが卒業の時に行くやつじゃないの?」

「そうなんだけど、大学に行ったらもっと皆バラバラになっちゃうもん。
安いところでいいからさ、皆でいこうよ!」

温泉……
た、楽しそう……。

「みわちゃん、行くでしょ?」

「うん、行きたいな」

「決まり! 行こう行こう!」


「オレはパス〜。来月じゃこっち帰ってくる予定ないし」

「俺も少々厳しいかな。また次の機会に」

紫原さんも赤司さんも、そのためだけに東京に戻ってくるというのはなかなか難しそう。

「ムッ君と赤司君は無理かあ……。
じゃあ、テツ君は? 行くよね?」

「すみません、ボクも来月は立て込んでいまして……」

皆、卒業とはいえ、すぐに新しい生活が待っている。
予定はてんこ盛りのようだ。

「えー! じゃあどうしようかなあ……
皆が来れる日にちってあるかなあ」

今こうして集まれているのは、年末だし、ウィンターカップがあったからだ。

こうやって、全員が集まれる機会は、そうそうないだろう……。



「桃井」

打つ手なく静まり返った場に、静かに優しく響く声。

「今晩から行ったらどうだ?」

赤司さんは、湛えた微笑みを崩さないまま、そう問いかけた。



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