第72章 悋気
大晦日。
もう、今年も終わりか……。
お天気お姉さんによれば、今日は西高東低の冬型の気圧配置らしく、東京は晴天ながらも冷え込んでいる。
多くの店が冬季休業に入っている中、オレたちはストバスコートに集合していた。
「さむっ! まだ皆集まんないんスか?」
屋根すらないストバスコートでは、寒さをしのぐ方法がない。
去年の冬休みに買ったダウンコートでも、いくら若いとはいっても、この寒さはこたえる。
集合しているのは、オレとみわ、赤司っちに紫原っちと緑間っち、高尾クンだ。
寒風にさらされながら、残りのメンバーを待っていた。
「さつきちゃんと青峰さんは、もう公園の入り口まで来てるって」
みわがスマートフォンを確認してそう言うと、高尾クンがチャリアカーに跨ってしまう。
「あれ、高尾クンもう帰っちゃうんスか?
やってけばいいのに」
「いや、俺は真ちゃんを送り届けに来ただけですから、後はミナサンでごゆっくり!
真ちゃん、じゃまた夜なー」
「ああ」
そう言って、寒さなどものともしない爽やかな笑顔で、さっさと帰ってしまった。
「夜会うなら、やっていけばいいのに……
ねえ、緑間っち?」
「夜会うと言っても、年越し蕎麦を食べるだけなのだよ。それまでは実家の大掃除を手伝うんだと言っていた」
「……ふーん、そうなんスか」
そう言えば、一昨年の年末も蕎麦屋で2人に会ったな。
どうやら、年越し蕎麦を一緒に食べるのは恒例になっているらしい。
本当に、不思議な関係の2人だ。
……正直、羨ましくもある。
オレはどっちかっていうと、外ヅラだけ良くして壁を作るタイプだから、ずっと一緒に過ごすような男友達は、キセキの皆くらいしかいない。
まー、浅く広くの付き合いを徹底している自分の責任か。
向こうから、桃っちと青峰っちが歩いてくるのが見える。
残るは……
「あれ? 黒子っちは?」
「黒子くんなら、ここにいるよ?」
そう言って、みわはオレの後ろを指した。
振り返るとそこにはいつもの黒子っち。
「おあ! いつの間に!?」
「相変わらず、みわさんにはボクの影の薄さは通用しませんね」
水色の髪の彼は、朝靄のようにうっすらと微笑んでいた。