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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第70章 特別


「みわ、歩ける?」

「だっ、だいじょぶ」

意識しても、不規則になってしまう下駄の音。

浴衣は涼太になんとか着付けて貰い、今はおばあちゃんの家まで送って貰っている。

少し眠って身体も楽になった筈なのに、足にはまだ余韻が残ってしまっているようで、涼太に支えて貰いながら歩くという醜態を晒していた。



「あれ、おばあちゃん?」

前方には、よく見慣れた小さな背中。
どこかに外出していたようだ。

「おや、みわも黄瀬さんも、随分遅かったのね。書き置きはして行ったんだけど」

「あ、うん、楽しくて、つい」

なんだか気恥ずかしい。
先程までの情事が脳裏に浮かんだ。

あんな事をしてたなんて、言わなければ分からないのに。

「おばあちゃん、どこに行ってたの?」

おばあちゃん、なんだか元気がない。

「ちょっと、突然連絡があってね。
知り合いの……お通夜に出ていたのよ」

お通夜……
そうか、この服……喪服だ。

「そうだったんだ……ごめんね、そんな時に留守にしてて」

おばあちゃん、辛そう……。
そんな事も知らずに私、遊び歩いて……。

「なぁに言ってるの。
ずっと、"涼太元気かな、何してるかな"って帰ってくるのを楽しみにしてたじゃない」

「……マジっスか」

「お、おばあちゃん!!」

「ふふ、みわたちの顔を見たら元気になっちゃった。さあ、帰りましょう」

「……うん」

「黄瀬さんも、いつもみわを送ってくれてありがとうね」

「あ、いえ、こんなのは全然」

「……浴衣はね、ここをこうして着るともっと見栄え良くなるわよ」

おばあちゃんが涼太に小さな声で何かを言って、浴衣の首元や裾を直していた。

「あ、ハハ……敵わないっスね……。
ありがとうございます」





私は、まだちゃんと聞く事が出来ない。
涼太が、遠く離れた場所に行こうとしているんじゃないかって、こと。

私たちは、3人並んで家に向かって歩いた。
季節も、秋に向かって歩みを進めていた。





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