第69章 偽り
ここは、以前涼太に洋服を買って貰った時に来た、ファッションビル。
2人だとするりと入れた正面入り口を、少しドキドキしながらくぐり抜ける。
周りを歩く女性たちは皆素敵に見えて、引け目を感じてしまうけれど……。
勇気を出して、一歩を踏みしめた。
今年のプレゼントは、ちゃんと"モノ"を渡したい、そう思って。
涼太はカタチなんて気にしないと言ってくれたけれど、これは私の気持ちの問題。
あちこちお店を見て回ったけれど、ここが一番だった。
私なりに少し奮発して、買う事に決めたの。
お金はまた、貯めればいい。
「ありがとうございましたー!」
「……よしっ」
問題なく受け取る事が出来て、
思わず小さくガッツポーズ。
お店で商品を受け取り、涼太が買ってくれたリュックにしまう。
あのお店でやってくれるラッピングはシンプルなものしかなかったから、少し買い足して豪華にしようかな。
メッセージカードも、欲しい。
どこで買おう……そんな事を考えていると、はるか前方にスズさんを見つけた。
スズさんも何か用があったのかな。
流石にこの人混み、この距離では追いつかない。
彼女は急いでいるようで、足早に去って行ってしまった。
元気そうなら、良かった。
そうだ、おばあちゃんが好きな芋ようかん、買って行ってあげよう。
私は、彼女が向かった方向とは逆方向の百貨店へと歩き出した。