第15章 噂 ー前編ー
なんだろう。
胸の奥がモヤモヤする。胸焼け?
今日は、なんだか集中できなかった……。
練習後のミーティング前に、教室に忘れ物を取りに行く。
夏休みだからいつでも取りに行けると思っていたら、ついつい後回しになっちゃって。
教室には電気がついていて、数人人影が見えた。
「あれ、神崎さんじゃん。部活?」
「あ、うん……参考書、ロッカーに忘れてたから取りに来たの……皆は?」
「うちらは補習だよ〜神崎さんには縁のない話かもしんないけどさっ」
「そ、そんなこと……」
「神崎さんさあ、黄瀬君といつ別れるの?」
「え?」
「あたしさあ、黄瀬君としたエッチが忘れらんないんだよね〜……早く返して?」
「え……黄瀬くんと、つきあっていたの?」
「ううん、別に付き合ってないよ〜セフレってやつ? 結構いるよ、そんな子。……あれぇ〜神崎さん、まだ黄瀬君とヤッてないの?」
何、今日は一体なんなの?
なんでこんな事を言われなきゃいけないの?
「ねえねえ、神崎さん。黄瀬君を皆に返して? 黄瀬君って外でヤリたがるし避妊もしないから、大変っしょ?」
「そ、そんなこと……ない……です」
聞きたくない。聞きたくない。
「あたしら、カラダの相性ピッタリでさ〜黄瀬君のってデカいから、気持ちいいよね。だからさ……」
「私……っ、もう行くね……!」
顔を上げないまま、私は教室を去った。
「あ〜あ、神崎アレ泣いてたんじゃね?」
「アンタ、黄瀬君とヤッた事本当にあんの?」
「あるわけないじゃん。むしろヤリたい。バスケ部3年にさ、神崎と付き合いたいからって、黄瀬君のそーゆー噂流してって、頼まれたの。テキトーテキトー」
「何ソレキモくね?」
「アイツ結構モテるんだな。ムカつく」
「それでテキトーなこと言ってあの2人が別れれば、願ったり叶ったりじゃん?」
「おまけにあの3年、どんな事しても手に入れるみたいなこと言ってたし、おもしれーなーと思って」
「おもしろ! お前相当ワリーな!」
「夏休みが終わったら、どうなってるか見ものだわー」
「ってか、何ヶ月も付き合っててまだヤッてないってことに驚いたわ…」
「アイツじゃ勃たないんじゃね!?」
「チョーウケるんですけどー!」