第65章 星空
「黒子くん、そんな、どうしていきなり」
「……いきなりじゃありません。ずっと……ボクは去年、みわさんと黄瀬君のお見舞いに行った時から、気になっていました」
「え……」
「今までは、黄瀬君もボクの大事な友達だし、諦めてふたりを見守ると決めていました。
キミが、黄瀬君の事を嬉しそうに、愛おしそうに話す姿が大好きだったからです。
……でも、黄瀬君がみわさんの事を大事にしないなら、話は別です」
突然の展開に、頭がついていかない。
今日、涼太は誰かとふたりきりで会っていた?
涼太はそれを隠していた?
黒子くんが私の事を好きだった?
黒子くんが?
付き合って欲しいって?
涼太と、別れて欲しいって?
ぐるぐるぐるぐるぐると言葉たちが回って、どうやって受け止めればいいのか分からない内に、一斉に叩き付けてくる。
目が回りそう。
「みわさん、今すぐに答えをくれなくていいです。
でも、……ボクは本気です。考えておいてください」
そう言うと、黒子くんの身体は離れていった。
「……送ります。もう、遅いので」
「……あ、うん」
「みわさん、大丈夫ですか?」
「…………」
「みわさん」
「あっ、ごめんなさい、何?」
「いきなり驚かせてしまってすみません。
ボク、少し頭に血が上ってしまいました」
その言葉にすら、うまく返事が出来ない。
あまりにも予想外の展開すぎて、完全についていけなくなっていた。
「……さっきも、黄瀬君の話をする時に酷い言い方をしてしまいました。
すみません」
「ううん、私も……ちょっと驚いてしまって」
のそりとベンチから立ち上がると、出口に向かって歩き出した。
これも……私の性質のせいなの?
お母さん、私はどうしたらいいの?
涼太、何が本当なの?
少し、気持ちを整理したい。
大きく息を吸い込んで、天を仰いだ。
ああ、やっぱり都会は星が見えない。