第3章 人と人ならざるもの
「ここから別の次元にある極夜の国へと行けます」
「別の次元って……さらっと言わないでよ」
「まあまあ。――あぁ、そうそう。あなたにこれを渡しておきます」
シャドウが自分の腕に付けていたブレスレッドをアスミに手渡す。青で全体が統一されており、チャームは6枚の花弁を持つ花となっている。
「何これ」
「瘴気よけのブレスレッドです。極夜の国には瘴気が漂っていますからね。人間であるあなたには危険です」
「この花、何?」
ブレスレッドを腕に付けながら小さく首をかしげるアスミ。
「この花は、ブローディアと呼ばれる花です。花言葉は『守護』で、吸血界ではよくお守りとして使われている人間界の花ですよ」
一通り説明し終わり、シャドウはやわらかく口元に笑みを浮かべる。
「さて、レディーファースト……と言いたいところですが、中は暗く危険ですからね。私が先に行きましょう」
「うん」
なんのためらいもなくアスミの手を取り、暗闇へと足を踏み入れるシャドウ。
アスミもその後に続きながら、慎重に歩いていく。
シャドウの両目が暗闇の中で光っているのを見て、不安がどんどん募っていく。
――本当に大丈夫なのかな……。
――妖怪の国って……。
手首で揺れているブレスレッドを感じながら、小さく唇をかみしめる。
――はぁ……。
――あんな未来も見ちゃったし……いろいろ最悪だ……。
と、突然、視界が白く染まった。