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人間と妖と、

第5章 終章




 ▼◇▲


「さて、戻りますか」


シャドウが、木の幹に手を当てて呪文を唱えると、極夜の国へと続く入口ができた。
アスミは、その様子を黙って見ていた。


「柘榴さんとひよりさんとも、ここでお別れです。極夜の国にある、あなた達の屋敷の前に入口を設定してあります」
「わざわざすみません」
「いえいえ」


シャドウがひよりに会釈する。
ひよりはシャドウとアスミに微笑みを返すと、すっと入口へと足を踏み入れた。
ひよりの姿が消えると、柘榴も入口へと片足を入れる。


「健闘を祈りますよ、柘榴さん」
「二度とてめぇに会わねぇからな。来ても追い返すから」
「ひどいですねぇ。ま、こんな用件で会いに来ないようにしますよ」


ぱちりとウィンクしてシャドウは、入口を手で示す。
柘榴はチッと舌打ちをして、入口へと消えていった。
木の幹の穴が消えると、シャドウは再び呪文を唱える。
吸血界へと続く穴を見つめて、アスミは小さく呟いた。


「……いろんなこと、あったなぁ……」
「そうですね……でも、無駄な時間ではなかったでしょう?」
「そうだね」


シャドウにアスミは微笑み返す。


「でも疲れた。学校行きたくない……」
「休めばいいですよ」
「サボりって……」


そんな会話をしながら、元の世界へと戻っていく2人。


その入口が閉ざされた時、森の中には、ただ鳥のさえずりだけが聞こえていた。



















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