第5章 終章
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夜が明けて。
「それじゃ、大変ご迷惑をおかけしました」
シャドウは、花音と狐優に対して深々と頭を下げた。
昨夜、『悪鬼』が暴れていたとは思えないほど平和な森の中。
ひよりも丁寧に頭を下げるが、柘榴はかったるそうにしている。
「また来てね!」
「……もう来なくてもいいかも……」
満面の笑みの花音と、青ざめている狐優に、アスミはいつ声をかけるのか迷っていた。
礼を言いたくとも、なかなかタイミングが掴めない。
「姫島さん」
と、シャドウがこっそりとアスミに耳打ちする。
「……何?」
「私達は先に行っていますから、言いたいこと言って下さいね」
「~~~~ッ!」
すばりと指摘され、カァっと頬が赤くなる。
シャドウが「頑張って下さい」と言って、柘榴達と森の中に入っていってしまった。
「あ、あの……」
「どうかした?」
「その……昨日は、ありがとう。本当に、ありがとう」
絞り出すように言った感謝の言葉に、花音と狐優が顔を見合わせる。
だが、花音の方はすぐに笑顔になり、アスミに「私もありがとう!」と言った。
「ほら、狐優も、何か言ったら?」
「……う……。……元気でね」
ぼそりと呟かれた言葉に、アスミはどう反応すればいいかわからない。それでも、胸の中はすっきりとしていた。