第4章 人と人ならざるもの、弐
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数十分前。
狐優は、自室の片隅で、ひっそりと息をしていた。
「簡単に口癖みたいに言わないで!」
先ほど、アスミに鋭く叩きつけられた言葉が脳内に響く。
狐優はその声を追い出そうと、頭を振った。
――また、『嫌い』って言っちゃった……。
――そういうのが言いたいわけじゃないのに……。
――花音にも、前に『嫌い』って言っちゃったし……。
――本当に、僕は……。
ぐるぐると感情がうずまき、沈みこんでいく。
――あの妖怪や吸血鬼にも、ひどいことを言っちゃった……。
――彼らが言ってるのは、間違ってないのに……。
――神邪洞は確かに封印が解けてるから……。
自分の先ほどの言動に、自己嫌悪に陥っていく。
素直に本音を表現できない自分。
ストレートに感情を表す花音達。
正反対な彼女達を思い出し、また深い憂鬱へと沈みこんでいく。
正直に言うと、今まで独りで過ごす事の多かったから、こういう風に多人数と触れ合うことがなかった。
だから、そこに対する戸惑いと一種の喜びが混じり合って、心をかき乱していく。
――僕は……なんて言えばいいんだろう……。