第4章 人と人ならざるもの、弐
「あなたは姫島さんと年が近いようですし、よければ彼女の『友人』になっていただけないでしょうか」
「え?」
突然の『お願いごと』に花音は目を丸くする。
「でも、私幽霊だし……」
「だからいいんですよ。人間ではわかることのできないことも、わかってくれるかもしれませんしね」
遠まわしな言い方をするシャドウ。
花音は、しばらく考え込んでいたが、見る者が幸せな気分になるような笑顔になって、しっかりと頷いた。
「わかった!」
「ありがとうございます」
そう言って目を伏せるシャドウはどこか憂いを帯びていた。
▼◇▲
天宮ひよりは、台所で調理しながら、僅か半日のうちに起きたことを思い返していた。
あまりにも目まぐるしく物事が進んでいるが、心中は平穏に包まれていた。
夫である柘榴がシャドウに直接的な攻撃をしているが、それでも個人としては認めているのはよくわかっていた。だから、柘榴の言動はいつも見守る立場でいたし、特に口出しはしないと決めていた。
――柘榴様は、本当はお優しい方ですから。
――私が口うるさく言うのはおかしいですものね。
思わずくすりと微笑むと、背後に誰かの気配を感じた。
ひよりは振り返らずに、調理の手を止めただけで、背後に立った人物の名前を口にする。
「シャドウ様。どうかされましたか」
「少しばかりお話したいと思いまして」
ひよりがゆっくりと振り返ると、銀髪の吸血鬼が哀愁の漂う笑みを浮かべ、その場に立っていた。