第4章 人と人ならざるもの、弐
「なんで、あんたはそういう風に決めつけてるの? 確かに普通の人間はそうかもしれないけど、なんであたしやひよりさんまでそういう風に言われなきゃいけないの? それに、花音って子も元人間なんでしょ? なんでそんな風に言うの?」
「……僕は……花音のことなんて……嫌いだ……」
そう呟いたとき、アスミは勢いよく立ちあがっていた。
突然の動きに、びくりと狐優が肩を揺らす。
「嫌いなんて……簡単に言うなッ!」
感情に任せて発せられた言葉が、部屋にこだまする。
シャドウが悲しそうに微笑むんだのが、アスミの視界に入るが、彼女の怒りを止めるまでには至らない。
狐優が、ぎゅっと自分の体を抱きしめるように座っていたが、その目には弱々しさは表れていない。
「……君に……何がわかる……」
「知らない。でも、嫌いなんて、そんな簡単に言わないでよ……ッ」
「……君には、関係ない……」
「あんたは人間に怖がられたんでしょ!? だったら、『嫌い』って言われた辛さも知ってるくせに! なのに、簡単に口癖みたいに言わないで! そんなんだから人間からも嫌われるんだよッ!」
鋭く一息に叩きつけた言葉。
狐優は青ざめた血色の悪い表情のまま、アスミをじっと見つめる。その目を見つめ返した時、自分が何を言ったかを自覚し、急激に頭と心が冷えてくる。
――何、初対面の相手に言ってんだろ……。
重い沈黙に耐えきれなくなり、アスミは狐優から背を向ける。
「……外、出てくる……」
「姫島さん……」
シャドウが後ろで呼びとめる声がするが、その声を振り払い、アスミは夜の闇へとかけていった。