第4章 人と人ならざるもの、弐
――何が大丈夫なの? 花音って子も、あっさりシャドウのこと信じて……。
――それにしても、なんか普段のシャドウと違う気がする……。
――焦ってるって言うのか……。
銀髪の吸血鬼に対して、ふと疑問に思うが、首を振って無理矢理忘れようとする。
――今考えてたって無駄だよね。
――とにかく、シャドウがこれ以上余計なことしないように見てないと……。
室内へとあがり、幽霊少女の後を追って、一つの部屋へとたどり着く。
「狐優! お客さんだよ!」
通された部屋の隅には、一人の少年がいた。
膝を抱えるようにして、じっとこちらを見つめている。
「ね、この人達、訊きたいことがある……」
「帰って……」
はっきりとした拒絶の言葉に、花音の動きが止まる。
それほど大きい声じゃないのに、冷たく淀んだ声。
思わずハッと息をのむアスミだが、シャドウが困ったように笑うだけだ。
「突然来てしまった事は謝ります。ですが、少しばかり尋ねたいことがありまして……」
「…………」
「この近くに神邪洞があると思うのですが……」
目の前に座っている、狐優と呼ばれた少年の肩が揺れた。影のある表情のまま、シャドウを凝視する。
「……あの洞穴が……どうしたの……?」
「それについてお話をしたいんです。よろしいですかね」
シャドウが笑顔で言うが、目が笑っていない。
――シャドウ……?
若干、すごんでいると思うのは、気のせいだろうか。じわりと嫌な汗が背中を流れる。
どうにかして、この空気を消したくて、アスミはずっと疑問だったことを口にする。
「……あの、こういうときに言うことじゃないかもしれないけど……神邪洞って何……?」