第4章 人と人ならざるもの、弐
――家の事はわかってくれても……。
――私が見た、あの女の子については信じてくれないかも……。
「どうかしました?」
ひよりが、きょとんとした笑みを浮かべた。
後ろにはふてくされた顔の柘榴が立っている。
「え、いや……えっと、家を見つけて……」
「家?」
「うん。……と、とにかく来ればわかるって」
アスミはシャドウたちを連れて、森の中を進んでいく。
しばらく歩いていると、確かに一軒の家が見えた。
――よかった……。
――これで消えてたら、本当にあたしがバカじゃん。
自分の見たものが幻ではない事に安堵するが、それと同時に正体がわからないままなので、むくりと不安が湧きあがる。
「また、妙な場所に家があるな。……ってか、これ本当に家なのか? 変な形だな」
「私も初めて見ますね」
日本の民家を見た事のない柘榴とひよりが、不思議そうな声を出す。
ちょっと強めの地震が来たら、崩れてしまうような木造建築の家。
柘榴やひよりの住んでいた極夜の国、白夜の国の民家と似ているが、やはりどこか違うのだろう。
――まあ……水道とか電気とかもなかったからね。
――珍しいのもわかるかも……。
シャドウはしばらく家の周りを調べていたが、訝しげな表情で首をかしげる。
「うーん……変な所に家がありますねー。まあ、とりあえず入ってみますか」
ドアの横に取り付けられているほこりと土にまみれたインターホンを、シャドウは迷うことなく押す。
家の中から、ピンポンという聞き慣れた音がする。
しばらく、待ってみるがなんの応答もない。また、もう一度押すが、やはり家の中からはなんの物音もしない。
「うーん……いないんですかねぇ」
「こんな山奥にあるんだから、人がもうすでに住んでねぇかもよ」
「それはありませんよ、柘榴様。ほら、ちゃんと家の管理はされているようですし……」
「つーか、あの洞穴を封印すんのに、この家を調べる必要あるのかよ」
「大ありですよ」
あれよこれよと言い始める大人たちから、アスミはしばらく離れて、家の周りをぐるりと調べてみる。