第4章 人と人ならざるもの、弐
▼◇▲
――さっきのって、何!?
森の中を抜け、シャドウたちのいる場所へと走りながら、アスミは激しく動揺していた。
シャドウの魔法で、自分の住んでいる人間界のとある森へとやってきた。
柘榴は隙さえあればシャドウを絞殺しかねない雰囲気だし、一緒についてきたひよりはそんな彼をなだめているし、シャドウは反省の色もなくのらりくらりとしているし、本当に息がつまりそうだった。
気分転換にちょっと周りを探索していたところ、一軒の民家を発見したときは、こんな山奥にあるなんて、と驚いた。
だが、それよりも、ドアの向こうから突然顔を出した少女の方が、アスミには衝撃的だった。
なんの躊躇いもなく、すっとドアの向こうから顔を出した、アスミと歳が近いと思われる少女。
――ちょっと待って。
――幽霊……なわけないから! 吸血鬼とか妖怪なら分かるけど!
半ばパニックになりながら、シャドウたちのところへと行くと、なぜか柘榴がシャドウの胸ぐらをつかみ上げていた。
――え、何この状況。
別の意味で焦るアスミ。ひよりが柘榴を必死になだめている。
「柘榴様、落ち着いてください」
「……これ、私への嫌がらせですか? 私が近距離攻撃に弱いのを知っていて?」
「何を企んでんだ?」
いつもよりも低い声音の柘榴に、アスミの背筋が凍りつく。
――え、何。
――またシャドウが何か怒らせるようなことをしたり、言ったりしたの……?
混乱するアスミだが、柘榴の膨れ上がる怒りに怖気づいてしまい、何も言いだす事ができない。
「あぁ、姫島さん。心配しましたよ。どこに行っていたんですか?」
「……いや、心配なのはこっちなんだけど」
「今の私の状態ですか? 別に、ただ柘榴さんに『これからどうしましょうかね』って言っただけですよ。そしたら、胸を掴まれてしまって……」