• テキストサイズ

人間と妖と、

第3章 人と人ならざるもの



――なんで、そこまでしてるの……?


どうしようもない不安と疑問に包まれていると、シャドウの魔力が弱ったのを感じる。
それと同時に、体の内側で渦巻いていたざわめきも静まった。シャドウの魔力から解放されたひよりは、やや青ざめながらも、ほっと息をつく。

アスミは、シャドウの額を汗が一筋つたったのを見逃さなかった。
柘榴はひよりを支えながら、渋く殺気を含んだ声で、シャドウに尋ねる。


「……で? どうすりゃいいんだ?」
「神邪洞がある森に行きます。その後の事は、また現地で考えます」


先ほどの冷たく、刃のような笑みではなく、穏やかで優しい微笑みを浮かべながら、シャドウが答える。


「他に部下を連れていきたければ、どうぞご勝手に。私は面倒なんで連れていきませんが」
「……いや、いい。足手まといになるだけだ」
「そうですね。――アスミさん。あなたは、どうしますか? 人間界の方に帰りますか?」


シャドウが横向いて、アスミに尋ねかける。
その表情には、心の底から彼女の事を案じる思いが表れていた。
アスミはしばらく考え、首を横に振った。


「あたしもついてくよ」
「困りましたねぇ……。かなり危険なんですけど……」
「あんたを独りにしてたら、ろくでもないことしそうだから。あたしがいるのに、人に迷惑をかけてるし」


ぼそぼそと答えると、シャドウは困ったように目を伏せて笑う。


「……そうですね」


――あたし、なんか変な事言った……?


彼らしくない答え方に、アスミの中の疑問が倍増する。
だが、シャドウに見えていた切なさも一瞬のことで、その直後には普段の愛想のよい笑みに変わっていた。


「それでは行きましょうか」

 












/ 54ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp